輪投げ工法とその問題点

 

「輪投げ工法」とは何か?

「輪投げ工法」は、既存杭引抜き工法として、日本全国において最も多く採用され普及してきた工法でした。
既存杭にケーシングをかぶせて削孔し、地盤と既存杭の「縁を切った」あと、杭にワイヤーをセットして、杭を原型のままクレーンなどで引き上げます。
引抜き孔の埋戻しは、杭孔上部からの流し込み注入が一般的でした。
輪投げ工法01
輪投げ工法02

 

輪投げ工法のプロセス(一例)

杭芯セット
①杭芯セット
杭芯にケーシングの中心をあわせてスタンバイします。
削孔開始
②削孔開始
掘削液(水orベントナイト水)を送りながらケーシングを回転させて掘削します。
ケーシング引上げ
③ケーシング引上げ
指定削孔長まで掘削したらケーシングを引き上げます。
ワイヤーセット
③ワイヤーセット
ケーシング先端にワイヤーを仕込み、挿入して杭にワイヤーをセットします。
杭引抜き
④杭引抜き
クレーンなどで杭を引き上げます。同時に上部から注入を行います。
重量のある杭の場合
⑤重量のある杭の場合
杭重量が重い時は、多滑車を複数台使用して引き上げます。
上部杭切断・撤去
⑥上部杭切断・撤去
杭重量が重く1回で引き上げ不可の場合、杭上部を切断撤去して作業を継続します。
撤去完了
⑦撤去完了

 

輪投げ工法の特長は?

①大口径杭や重量杭の撤去が可能でした

既存杭にワイヤーをかけて、既存杭単体重量だけを引き上げるので、大口径杭や重量杭の引抜きが可能でした。
超重量杭の場合は多滑車を複数台使用することで撤去していました。
輪投げ工法の特長

 

引抜き可能な杭

  • 松杭
  • PC杭
  • 摩擦杭
  • 現場造成杭(最大φ2500mm)
  • 拡底杭

 

②引抜き孔への充填に課題がありました

充填品質を確保する方法が輪投げ工法の課題となっていました。大口径の杭は引抜き孔も巨大なので、埋め戻し充填による地盤環境整備は特に重要です。
輪投げ工法では、引抜き孔への充填は、基本的に杭孔上部からとなっていましたが、調査したところ、不均一な埋め戻し充填がみられました。
スパイラルスクリューや攪拌ロッド、またエアブローやエアリフトを併用させた攪拌が行われることもありましたが、安定して良い品質を提供することは叶いませんでした。
引き抜き孔の状態
均一に混ざらずに層になる
充填材を注入しても内部は混ざらずに層になってしまうケースがあります。
エアリフト・エアブロー
①上下を強制撹拌する
エアリフト・エアブロー工法で杭孔内部の上下層を強制的に撹拌します。
エアリフト・エアブロー
②上下均一に近づける
上下均一の固さに近づけます。

 

③不健全な杭の引抜きに課題がありました

輪投げ工法は杭にワイヤーをかけて引き抜くので、中折れ・破損・ジョイント不良などの不健全な杭の多くを地中に残置させてしまいました。
ワイヤーを杭上部ではなく、杭の最下部付近にかけて引き上げる方法も施工されましたが、確実ではありませんでした。
引抜き不可能な杭

  • 折れ杭
  • 壊れた杭
  • ジョイント部未接合など
輪投げ工法
折れた杭などが地中に残存する恐れ