杭抜きコラム(1)旧相模川橋脚について

神奈川県茅ヶ崎市の「旧相模川橋脚」は日本最古の杭基礎として有名です。事の起こりは大正12年の関東大震災。この大地震と翌年の余震によって水田が液状化し、そこから7本の木杭が出現しました。当時の歴史学者、沼田頼輔によって、鎌倉時代の建久9(1198)年に、源頼朝の重臣稲毛重成が亡き妻の供養のために架けた橋の橋脚と考証され、大正15年に国の史跡に指定されました。
なんと鎌倉時代に施工された杭基礎が、700年以上も地中に眠っていたのです。木材を腐敗させる菌が繁殖するためには酸素が必要です。中世の杭基礎は地中で地下水の中にあり、酸素が少ない状態だったので、腐敗せずに残っていたと思われます。空中に出現した木杭は腐敗してしまうので、保存池が作られ、数多くの人々によって保存の努力がなされてきました。平成13(2001)年からの保存整備事業により、木杭は保存処理を施し地中に保管され、地上には寸分たがわぬレプリカが並んでいます。
当ホームページのトップ・スライドショーの中に、この「旧相模橋橋脚」の写真があります。保存池から屹立した橋脚は、レプリカとはいえ、出現当時のままの姿を保っています。土木史学上も大変に貴重なものであり、保存管理をされている茅ヶ崎市社会教育課のご協力のもとで撮影させて頂きました。この場を借りまして御礼を申し上げます。

一般社団法人日本杭抜き協会 事務局


旧相模橋橋脚