杭の種類とその歴史

 

日本では多くの建築物が、軟弱な地盤に建てられ、基礎杭で支えられています。
「既存杭」とはこの基礎杭が、建物を取り壊した後も地中に残存したものです。
基礎杭には多くの種類があり、それぞれに歴史があります。

①木杭

木杭の歴史は古く、日本最古のものは、神奈川県茅ケ崎市にある「旧相模川橋脚」であるとされます。
これは1198年の鎌倉時代に架けられた大橋の木杭基礎で、長らく地中に埋もれていましたが、1923年(大正12年)の関東大震災と翌年の余震で出現し、国の史跡に指定されたものです。
木杭はほとんどが打撃工法で打設されてきました。1858年(安政5年)に三菱造船株式会社、長崎製鉄所の建設のために、スチームハンマーで数千本の木杭が打ちこまれた、という記録が残されています。
木杭は現在でも利用されていますが、その多くは昭和30年頃まで、約800年にわたり、建築土木を問わず、日本中の基礎杭として使われてきたものです。
日本最古の木杭「旧相模川橋脚」(撮影協力:茅ヶ崎市教育委員会)
日本最古の木杭「旧相模川橋脚」(撮影協力:茅ヶ崎市教育委員会)
東京駅前、旧丸ビルを支えていた松杭(収蔵:三菱地所株式会社)
東京駅前、旧丸ビルを支えていた松杭(収蔵:三菱地所株式会社)
スチームハンマー・1875年製(収蔵:株式会社技研製作所)
スチームハンマー・1875年製(収蔵:株式会社技研製作所)

 

②鋼杭

日本では、1908年(明治41年)に大阪の高麗橋建設に使用された棒鋼杭が最初といわれています。
その後、H型鋼から鋼管杭へと進化、変遷していきます。
鋼杭の多くは打撃工法(スチームハンマー・ディーゼルハンマー・油圧ハンマー・バイブロハンマ)などで打設されてきましたが、スチームハンマーとディーゼルハンマーは時代と共に使用されなくなりました。
鋼管杭は、その後中堀工法なども採用されるようになり現在に至っています。
継ぎ手は溶接やボルト継ぎ手、鋼管杭は溶接継ぎ手が一般的です。
鋼管杭
鋼管杭
ディーゼルハンマー・1938年製(収蔵:株式会社技研製作所)
ディーゼルハンマー・1938年製(収蔵:株式会社技研製作所)

 

③コンクリート杭・既製コンクリート杭

コンクリート杭は、1910年(明治43年)に開発された「現場締固め既製鉄筋コンクリート杭(角杭)」が最初といわれています。
その後、1934年(昭和9年)に遠心力を利用した「遠心力コンクリート杭(RC杭)」が開発されました。RC杭は打撃工法にて打ち込まれました。
その後、予め圧縮力を与えるプレストレスを導入した「遠心力成形プレストレストコンクリート杭(PC杭)」が開発され、1967年(昭和42年)に首都高速1号線の橋脚に用いられました。
この翌年にはJISが制定され、PC杭は広く普及するようになります。また1970年(昭和45年)には、現在でも一番多く使用されている「遠心力高強度プレストレストコンクリート杭(PHC杭)」が開発されました。
打ち込み方法も、打撃工法からプレボーリングへ、回転埋設工法へと変遷していき現在に至ります。
中堀工法はそのまま現在も採用されています。継ぎ手には「ほぞ式継手」「溶接継ぎ手」「TPジョイント(無溶接継ぎ手)」「PJ(無溶接継ぎ手)」など多くの種類があります。
既製コンクリート杭
既製コンクリート杭