理想の埋戻し材とは?

 

理想の埋戻し材とは何か?

既存杭を引き抜くと孔が残ります。この孔を埋めることを「引抜き孔の埋め戻し」と呼びます。
杭を除去するだけではなく、埋め戻しが完了してはじめて「杭抜き工事を完了した」ということができます。

埋め戻しの基準になるものは何か?

私たちは埋め戻し工事の際、何を基準に埋め戻せば良いのでしょうか?答えは明白です。元の地盤です。
杭を打つ前の本来の地盤を復元できることがベストです。
しかし元の地盤は、すでに杭の打設と引抜きによって破壊され変化しており、元通りの復元は今の技術では不可能です。
では何をもって「元の地盤と同等」といえるのか?そこに答えを見出し、最適な方法と材料で埋め戻しを行うことが、我々だけでなく、次世代の人々にとってもとても重要なことです。

埋め戻し工事にも「スタンダード」が必要

従来の既存杭引き抜き工事では、発注者や施工業者などが思いのままに埋め戻し材料を決定し、杭抜き工事を行っていました。そしてその埋め戻しが原因で、当該地の陥没や周辺地盤の沈下、また引抜き孔の埋戻し不良により新設杭の打設などに多くの問題が発生していました。
当協会では、引抜き孔の埋め戻しの標準を確立するために、埋め戻しに必要な材料の特性や、実際に埋め戻した後の引抜き孔の検証などの研究を行っています。

どの埋め戻し材料がベストなのか?

現在の埋め戻し作業に使われる主要な材料をご紹介します。

①砂

砂

 

これまで最も多く採用されていたのが砂ではないでしょうか。
砂を使う理由は以下のようなことが考えられます。
A. 安価だから
B. 自然のものだから
C. セメント系材料を使用するのは望ましくないから
しかし砂による埋め戻しは、今の既存杭引抜き工事では、杭を引き抜いてぽっかりと開いた孔の上からしか、投入することができません。その場合、引抜き孔はすでに崩壊しており、良質な埋戻しは期待できません。砂の埋め戻しが原因で、抜き跡の陥没や周辺地盤の沈下などの問題も多く発生しています。
砂による埋め戻しは決して悪いことではありませんが、現状をしっかりと把握し、確実な量の埋め戻しや締固め・転圧ができないのであれば、危険を招くものと認識した方がよいと思われます。
当協会で流動化砂などを含め、この「砂による埋め戻し」に関してもさらに研究を行っていきます。

 

②流動化処理土

流動化処理土

 

流動化処理土は、建設残土に水・セメントを混ぜて作られるもので、流動性のある資源循環型の埋戻し材です。多数の埋め戻し現場に使用されており実績も豊富です。
しかし全国的にみると、標準材料として考えることには無理があります。流動化処理土プラントがない地域もあり、そのような地域ではそもそも材料が届かないからです。
また流動化処理土は、生コンのように外部からの搬入が一般的で、時間と共に硬化するので調整が困難です。
そのため埋め戻し数量が、杭1本につき50~100㎥のような、大口径杭の埋め戻しには適していますが、小口径で、杭1本につき1~3㎥の注入を、1日10回程度行うような埋め戻しには不向きです。

 

③セメントミルク

セメントミルク

 

セメントミルクは、セメントと水、各種の混和剤を混ぜたもので、杭打ち工事や山留工事、地盤改良工事などで数多く使用されています。
しかし引抜き孔の埋め戻しに使うことには、抵抗を感じる人も多いようです。その理由として以下のような声があります。
A. 硬くなって地中障害になる
B. コンクリートを引き抜いたのにセメントを入れるなんておかしい
C. ベントナイトが入ったら産廃である
ところが②の流動化処理土にもセメントは入っています。セメントミルクは配合量を管理することで、ほぼ同一品質のものを毎回製造できます。
またこれまでの用途の多くが、杭の根固め液や、地盤改良杭、構台やタワークレーンの支持杭などであったため、相当な強度が出るものと思い込まれていますが、実際にはqu28=0.2~0.5Nmm2程度の「柔らかい」ものも製造できます。
一番の利点は、セメントミルクは汎用のプラント設備により、工事現場で混錬作製ができる点です。日々変化する工事の進捗やトラブルなどにも対処しやすく、施工ロスが少ないタイムリーな埋め戻しが可能です。
このため当協会では、独自配合のセメントミルクをPG工法の標準充填材として定め、さらにノンブリージングの高性能タイプの研究開発を進めています。